翔の書庫「虹とひまわりの娘」


今日紹介する「虹とひまわりの娘」は、2001年6月8日、大阪教育大付属池田小学校に押し入った男に子供を殺害された遺族の1人、本郷由美子さんの手記です。
興味の無い方は読まない方が良いです。
興味のない方には正直つまらないだけです。
ただ、あの事件は世間を震撼させた事は間違いなく、被害者遺族の声がどういったものであるかを知るにはこの上ない本であると思います。
ひとつ注意書きをするのであれば、単純な同情で読むんであればやめた方が良いです。
単純に無残さだとかを感じるだけで、それ以外の何物も得る事はないでしょう。
この本を読むんであれば、自分が何かしらこの本と関係性があると判断した上で読むべきかと思います。
教育関係者である、心理学関係者である、警察関係者である、といった方が。
関係性があっても、本郷由美子さんと近い立場の人も読まない方が良いでしょう。
単に悲しくなるだけに思えます。
逆にバイタリティーが生まれる事もあるかもしれませんが、この本はもっと重要な要素を含んでいるのではないかと私は考えています。
内容としては、本郷優希が宅間に殺害されて、その時の母がどういった状況であったのか、その後どうなって言ったのか、今(2003年発刊時)どういった心持であるのか、といった事が何ページにもわたって書かれています。
私も人ですから、悲しみであるとか無残さであるとか、恐怖、不安といった事を実感できないまでも、呼んでいて理解はできます。
が、それで終わるようであればこの本を読んだ価値はないと思います。
自分とその本との関係上、読んで、世の中であれ自分の人生であれ、先に活かせる(言葉が適切ではないように感じるが)何かを見つけられた方が良い様に感じます。
正直な事言ってしまえば、私は男だし、親ですらないので、本郷由美子さんの母親的感情は理解すらできません。
ですが、そんな事件が起きた事に大きな衝撃と、ニュースを見たときの曇った自分の心はよく覚えています。
だからこの本を読んだんでしょうね。
そして思ったのは、「二度とこんな事件が起きないように。」などというごくありきたりなレベルでとどまってしまうのではなくて、その一歩先にすすんで、「二度と起こさないためにはどうすれば良いのか」であるとか、「開かれた学校を再び取り戻すためには」、「なぜこのような事件が起きたのか」、「時の流れに負けないような危機感はどうすれば養えるか」といった具体的なところまで掘り下げて考えられるようでなければ、この手記がとてももったいない。
この本をもっと価値ある本にするのは読む人次第かもしれませんが。

えぇ〜、まぁ、ここに書いたのは私個人の勝手な主観である事をここに述べます。
が、私が読んでて感じた事というか、具体的な事ではありませんが、抽象的に述べてみました。
最後に、この手記の中で印象に残っている一節を抜き出してさよならとします。

よい環境にある水は、凍ると美しい六角形の結晶になりますが、汚染された環境の水は形の悪い氷の結晶になってしまうのだそうです。
また、水を入れたビンに「愛」「天使」「ありがとう」などの美しい言葉のラベルを貼ったものと、「馬鹿」「悪魔」などの汚い言葉のラベルを貼ったものの氷の結晶を比べると、興味深い事に、美しい言葉の水は、神秘的で美しい六角形の氷になり、汚い言葉の水は、氷の結晶も崩れていると、そんな事を聞きました。

本当に興味深い話です。
これを聞いて本郷さんはどう感じたのでしょうか?
興味があったらぜひ一読を。